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2007年11月15日 (木)

アウトワードバウンド②

アメリカにおけるアドベンチャー系アウトドアスクールとして、かなり有名なアウトワードバウンドの長期登山プログラムなので、山にのめり込んでいるツワモノ達ばかりが参加してくるものだろうと想像していた。実際のところりお太郎と一緒だった参加者は30名程で、最初から7~8人ずつ3チームに分けられていた。そこで、自分が組み込まれたチームの面々を見渡して、少しばかり拍子抜けだったことを憶えている。

参加者のほとんど大学生くらいだったが、りお太郎のようにアウトドアを専攻、またはそれに近いような学部に所属している学生はいなくて、そればかりか登山の経験が無いような人ばかりだった。チームメートになった人には社会人もしくは無職者(フリーター)もいて、職業はトラックの運転手だったり、農業家だったりして少なくとも山の専門家らしくはなかった。そして、りお太郎を少しばかり不安にさせたのが、この7、8人のチームの中に3人女性がいたのだが、あきらかに体力が無さそうなことだった。

209177 40日間が4セクション(10日間ずつくらい)に区切られ、ずっと最初一緒になったメンバーと共に行動することになっていた。ただし、ひとつのセクションだけはチーム編成が変わり、ここだけ身につけたい技術の希望別にチーム分けがされた。アウトワードバウンドのプログラムでは、技術習得のための講義、講習はあまり無く、テクニックを学ぶというよりは、非日常的な活動の中でリーダーシップやチームワーク、自己啓発といった部分にひたすらフォーカスしながら活動するのである。活動内容をひとことで簡単にまとめてしまうと、ただひたすら仲間と一緒に山を登るだけでしかないのである。

317747 さて、りお太郎は日本人であるにもかかわらず、チームの誰よりもアメリカの山を登っていたし、メキシコで標高5,000m以上の山にも登っていたから、その経験によって一目おかれ、みんなから頼りにされることがあった。しかし、険しい岩場だらけの山域では、登山技術というよりクライミングの技術が発揮されるものだ。クライミングはほとんど経験が無いりお太郎は、ロープを使う登攀や、フリークライミングのテクニックが求められる場面では、逆に経験豊かな仲間に頼らざるしかなかった。だが、体力の面では、りお太郎は強い方だったので、一日の行動がおわり幕営地に着いてから余力が残っていて、テント設営とかを率先して行うことができた。そんな中、アウトワードバウンドの前半で、この余裕があるということによって、ストレスを感じてしまうことになってしまった。

60462 サン・ワン山脈を歩いていると、まわりにはいつも素晴らしい山々が聳え立っている。標高4,000mをこえるピークを登ることができる機会がいくらでもあるのだが、プログラムの中ではチームの仲間と一緒につねに行動しなくてはならない。活動中はいつも仲間と話し合いながら天候やチームの疲労度等考慮し、頂上を目指して登るか、あるいは撤退するがを判断する。りお太郎には少しばかり余裕があったので、いつも頂上を踏みたい気持ちばかり逸って、口から出てくる意見は、チームとしてガツガツ攻めようということばかりたった。しかし、誰かひとりでも行程に不安を感じていたり、体力的にもしんどいというような意見が出れば、チームとしては撤退すると決断を下さなくてはならない。登山では何よりも安全面を優先した上で、行動するのが常識だから、当然ひとりの勝手な希望によってチーム全体の行動が左右されることはない。りお太郎は自由気ままにひとりで登山することに慣れていたので、こういった集団行動が苦痛で仕方なかった。

目の前には、まだ日本人が誰も登っていないような山頂がある。ひとりでパッと登ってしまうこともできるのだ。でも仲間の誰かが疲れている。無理やり一緒に登ろうとすると、少なからずリスクがある。もし、そうだったら頂上には絶対に行けないのである。悔しいけど、話し合った上で決断し、全員が納得しなくてはならない。りお太郎は登りたくて登りたくて仕方がないピークをいくつもあきらめなくてはならず、それがストレスで、プログラムを楽しめてなかった。

でも、40日間の中でりお太郎は劇的に変わっていく。何がきっかけだったのかははっきり分からないが、アウトワードバウンドのプログラムの中に秘められている“マジック”によって、自分の中の何かが変わり、ストレスは消え去るのだった。(つづく)

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