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2008年12月 4日 (木)

アメリカでの父親 続

オレゴンからアリゾナ州にあるグランドキャニオン国立公園までは遠い。正確にどのくらいの距離があるかは、ちゃんと調べなくては分からんが、おおよそ青森から鹿児島といったぐらいか?スコットの“グランドキャニオン旅行”では、キャンピングカーを使い、陸路をひたすら移動する。学校主催の研修でありながら、宿泊先などは無い。とりあえず屋根のある建物に2週間ほどは全く縁がなくて、車内もしくは野外のテント内での寝袋泊が基本だった。今思い出してみると、事前にスコットが行く先々のキャンプ場を予約していることはなかったようだ。とりあえずちょうど良い時間に、今日はここで泊る。というスコットの判断が下されていた。泊る場所はキャンプ場のときもあり、ハイウェイの休憩所、どっかの広い駐車場、あるいは荒野のド真ん中だったこともあったと記憶している。まさに行きあたりばったりの旅だ。

スコットの計画のもとでは、グランドキャニオンまでの道のりは、最短距離で楽なルートになるはずはなかった。そこでは、マニアックな田舎道が使われていたり、大都会をわざわざ突き抜けてみていたりして、山や谷を越え、さらに無駄に迂回し、とにかく寄り道が多かった。“グランドキャニオン旅行”という名目なのに、りお太郎はハリウッドやディズニーランド、サンフランシスコの中華街やゴールデンゲートブリッジ、ラスベガスのカジノやシエラ山脈、モハベ砂漠にデス・バレー(死の谷)といったアメリカ西部のありとあらゆる名所に、望む望まないは関係なくスコットに連れていかれた。実際、最終目的地がグランドキャニオンになっているだけで、そこでは2日間くらいしか滞在せずに、すぐにまたオレゴンにとんぼ帰りするという、移動ばかりする超過密日程旅行なのだった。

こんな研修旅行だから、何かハプニングが起きないはずがない。りお太郎は“グランドキャニオン旅行”に2回参加した実績を持つ経験者、というか物好きなのだが、ホントにいろいろなことがあった。都会では必ずといってよいほど、誰かが迷子になった。当時のアメリカでは携帯電話などまだ無かったから、はぐれてしまった人はもとの場所に自力で戻るしかないし、他のみんなはひたすら待つことしかできない。また、レンタカーのキャンピングカーは頻繁に故障した。やはりアメリカ車はダメである。最も印象深いのは、かの有名な“死の谷”で足止めを食ったときのことである。あそこはつねに気温が40度を越える、恐ろしいほど熱くて乾燥した土地である。ちょっと通過するぐらいの予定が3日間とか滞在するハメになった。そのとき、りお太郎には火傷のような日焼けと“死の谷”にもう二度と訪問する必要がないくらい景色を目に焼き付けることができた。

数々の試練と、長い長い道のりの末、最終的にやっとグランドキャニオンにたどり着く。それは感動的な瞬間になる。一緒にいた仲間には涙を流すものもいた。そして、スコットに渓谷の中を歩きなさいと言われ、何も分からないまま、標高差1,000mの谷底に降り行っててしまい、登り返すのにめちゃめちゃシンドイ思いをして、少しグランドキャニオンを嫌いになるのである。この研修で何を学ぶのか、それをスコットに聞く学生はいなかった。ひとりひとりの感じ方は違っても、つらいこと以上に楽しみや達成感があった。大自然に触れ、忍耐力も身につけることができた。あと、旅が好きになった。仲間がもっと大事になった。アメリカが好きになった。

スコットにはどこか押し付けがましいところもあったが、アメリカ人らしい自由な発想も持っていて、いろんなことに興味があり、とにかく、いろんなことをやってみようという考え方だった気がする。学ぶということ、経験値を上げること、知識を増やすこと、成長すること、思い出をつくること、すべて何か行動を起こし、はじめて得られるものである。りお太郎がアメリカに来て、英語ができずにウジウジしながら、何をやるにも遠慮していたり、自分には無理だとあきらめてしまうことが多かったのを、少しずつ変えてくれたのはスコットなのかもしれない。これこそがアメリカの開拓精神、チャレンジ・スピリットなのかな?

スコットとグランドキャニオンに行ってから、りお太郎はひとりでたくさん旅をした。世界各地をアホみたいに動き回って、危険な目にもあったし、失敗もたくさんあった。山で死にかけたことなんかもあった。それでも、たとえ一貫性がなくとも、貪欲にいろいろ見てやろうとしてきたことがすべて糧になっていると思う。今の自分があるのは、そういった経験のおかげで、これから先も、たとえどんなに迷走しても、とにかく立ち止まらずに進んでいきたい。

いつかアメリカで、今度は自分がスコットを連れまわして、どこか一緒に旅をしてみたいと思うのである。

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